慢性咳嗽ではせきが出やすい悪循環が起こっていると考えられます。

慢性咳嗽では、さまざまな病気や環境要因が「気道の炎症やリモデリング」「せきを出す信号」を引き起こし、「せきの反射」が出やすい状態になっていると考えられます。
せきが長引くことで気道の炎症やリモデリングをさらに悪化させてしまう可能性があります。
このような悪循環(図11)を断ち切るためにも、せきを減らす治療を行うことが重要です。

*:気道が狭くなって元に戻らない状態

図1 相互関係のイメージ

相互関係のイメージ

Chung KF, et al. Lancet. 2008; 371(9621): 1364-74.より改変

慢性咳嗽があるとぜん息の悪化が起きやすくなります2)

慢性咳嗽のあるぜん息患者さんでは慢性咳嗽がないぜん息患者さんと比べて、1年間の中等度〜重度のぜん息増悪(悪化)を経験した割合が高かったという報告があります(図22)
特に「全身性ステロイド薬の使用」や「予定外受診」の割合が高いことが示されました。
ぜん息の治療目標の1つである増悪(悪化)のない状態を保つためにも、せきを減らす治療を行うことが重要です。

*:全身性ステロイド薬や、入院、救急外来受診、予定外受診のいずれかが必要なぜん息症状の悪化

図2 慢性咳嗽がある患者さんとない患者さんでのぜん息増悪の⽐較

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慢性咳嗽がある患者さんとない患者さんでのぜん息症状の⽐較
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Deng SJ, et al. Allergy Asthma Proc. 2022; 43(3): 209-19. より作図

慢性咳嗽があると、ぜん息の悪化以外にも
さまざまなリスクが生じる可能性があります3)

慢性咳嗽がある人では、ない人と比べて、80歳までにCOPDの増悪(悪化)のリスクが4.6倍、肺炎感染が2.2倍、全死因死亡率が1.7倍高かったという報告があります(図33)
「たかがせき」と考えるのではなく、長引くせきは早めに医師に相談することが大切です。

図3 80歳時点での慢性咳嗽による各イベント累積発現率(海外データ)

80歳時点での慢性咳嗽による各イベント累積発現率(海外データ)
方法
コペンハーゲンコホート研究における一般人口44,756人を対象に、慢性咳嗽がある患者群(2,801人)とない患者群で、追跡期間中(中央値3.4年)のCOPD増悪(悪化)、肺炎感染、全死因死亡率を比較した。

Landt EM, et al. ERJ Open Res. 2024; 10(1): 00697-2023.より引用

引用文献
1) Chung KF, et al. Lancet. 2008; 371(9621): 1364-74.
2) Deng SJ, et al. Allergy Asthma Proc. 2022; 43(3): 209-19.
3) Landt EM, et al. ERJ Open Res. 2024; 10(1): 00697-2023.