咳のしすぎで頭痛が起きるのはなぜ?考えられる病気や咳を抑える方法
2025年10月31日

咳が続いて体力が消耗するうえに頭まで痛み出すと、日常生活や仕事にも集中できず困ってしまいます。咳と頭痛が同時に起こると、「何か重い病気なのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。
実は、咳による頭痛にはいくつか原因が考えられます。この記事では、咳によって頭痛が引き起こされる仕組みや、咳と頭痛の両方の症状から考えられる病気について解説します。
さらに、つらい症状を和らげるための具体的な対処法も紹介しますので、ご自身の症状と照らし合わせながら、症状改善の参考にしてください。
咳のしすぎで頭痛が起きる理由
咳と頭痛が同時に起こるのは、咳という動作そのものが引き金となっている場合があります。ここでは、咳によって引き起こされる代表的な3つの頭痛タイプと、それぞれの特徴について解説します。
一次性咳嗽(がいそう)性頭痛が起きている
咳やくしゃみ、トイレで強く踏ん張るような動作がきっかけで、急に頭痛が出ることがあります。これが「一次性咳嗽性頭痛」です。
国際頭痛学会が定める国際頭痛分類でも一次性咳嗽性頭痛は定義されており、咳などで腹圧が上がると、頭の中の圧力(頭蓋内圧)が一時的に高くなることが原因と考えられています。一次性咳嗽性頭痛は多くの場合、左右の後頭部に鋭い痛みを感じます。咳やくしゃみを繰り返すと痛みが強まりますが、止まると数分で頭痛も治まることがほとんどです。
ただし、ごくまれに脳の病気が隠れている可能性に注意する必要があります。気になる症状が長引く場合は早めに医師に相談しましょう。
緊張型頭痛が起きている
激しい咳を繰り返していると、知らず知らずのうちに首や肩、頭部の筋肉が緊張しやすくなります。頭部の緊張が長く続くと、頭から肩にかけて筋肉がこわばり、頭痛を起こしやすくなります。特に、頭全体がぎゅっと締め付けられるような、重く鈍い痛みがだらだらと続くのが緊張型頭痛の特徴です。
また、筋肉の緊張が慢性化すると、普段なら気にならないようなちょっとした刺激でも頭痛として感じやすくなります。ただし、咳が治まり筋肉の緊張がほぐれると、頭痛も次第に和らいでいきます。
片頭痛が起きている
頭の片側または両側がズキズキと脈打つように痛む、これが片頭痛の典型的な症状です。原因はストレスや睡眠不足など様々ですが、そのひとつに咳も含まれると考えられています。
激しい咳による体への負担や、一時的な酸素不足が脳の血管の急激な拡張を引き起こし、その結果、周囲の神経が刺激されて炎症と痛みにつながるとされています。実際、長引く咳が続く患者の中で、片頭痛を併発している割合が高かったというドイツの調査もあります。
出典
咳と頭痛の両方の症状がある際に考えられる主な病気
咳と頭痛が長く続く場合、それは単なる一過性の症状ではなく、何らかの大きな病気のサインかもしれません。ここでは、咳と頭痛を伴う代表的な病気をいくつか紹介します。
呼吸器の感染症
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症といった呼吸器感染症では、咳と頭痛はよく見られる症状の1つです。
インフルエンザウイルスなどの異物が体内に侵入すると、免疫機能が反応して炎症が起こり、発熱や倦怠感、筋肉痛などとともに頭痛が生じます。
咳は、喉の炎症や気道にたまった痰を排出しようとする防御反応です。多くの場合、原因となる病気が治癒すれば咳や頭痛も緩和します。しかし、放置すれば重症化して肺炎へ進行するリスクもあるため油断は禁物です。
副鼻腔炎
副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔が炎症を起こしている状態で、主な症状は鼻づまりです。
膿を含む粘り気のある鼻水が喉の方へ流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が続くと、その刺激で気管支が反応し、咳が出やすくなることがあります。さらに、炎症が進行すると頭や顔が締め付けられるような重い頭痛を感じる場合も少なくありません。
こうした頭痛は、炎症によって周囲の神経が刺激されることが関係していると考えられています。
喘息
喘息の発作が起こると、激しい咳が何度も続き、その影響で頭痛が引き起こされることがあります。また、喘息のある人は気候の変化に敏感なことが多く、環境の変動が咳や頭痛のきっかけになる場合も見られます。例えば、台風の接近や気圧の急な変化といった気象条件の影響を受けて、喘息の症状のほかに頭痛が強くなることも少なくありません。
咳や頭痛を抑える方法
長引く咳や頭痛は日常生活に大きな支障をきたすことがあります。こうした症状を少しでも軽くするために、毎日の生活の中で実践できるセルフケアをご紹介します。
水分を補給する
体内の水分が不足すると、喉の粘膜が乾燥しやすくなり、その結果、咳が悪化しやすくなります。痰も粘り気が増して排出しにくくなり、咳き込みが長引く原因にもなりかねません。また、脱水は頭痛の引き金にもなるため、日頃からこまめに水分補給を心がけることが大切です。
水分補給は、一度にたくさん飲むのではなく、適度な量を頻繁に摂るのが効果的です。なお、コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、あまり有効とはいえません。水や麦茶、白湯などを選ぶとよいでしょう。
温かい飲み物を飲む
温かい飲み物は、湯気とともに喉をやさしく潤し、粘膜を保護してくれる効果が期待できます。さらに、体の内側から温めることで血行が促進され、筋肉の緊張を和らげることにもつながります。
一方、冷たい飲み物は胃腸への負担や気道への刺激につながることがあるため、咳が出ているときは温かい、または常温の飲み物を選ぶようにしましょう。なかでも、ハチミツ入りのホットドリンクはおすすめです。まだ人での臨床試験ではありませんが、動物実験の段階で咳止め薬に匹敵する効果が確認されています。
出典
部屋を加湿する
部屋の空気が乾燥していると、喉や鼻の粘膜が刺激されて咳や頭痛が悪化しやすくなります。乾燥対策には、加湿器を使って室内の湿度を保つのが効果的です。もし加湿器がない場合でも、濡れタオルや洗濯物を部屋に干すことで手軽に加湿できます。
特に就寝中は口呼吸になりがちなので、マスク(濡れマスクもおすすめ)を着けて寝ることで、喉や鼻の粘膜を守り、つらい症状の悪化を防ぐことにつながります。ただし、湿度が高くなりすぎるとカビやダニが繁殖する原因にもなるため、加湿器の向きや加湿のしすぎ、加湿器内のカビの発生には十分注意しましょう。
医療機関を受診する
セルフケアを続けても咳や頭痛が治まらない場合や、息苦しさ・高熱・今までに経験したことのない激しい頭痛といった重い症状が出た場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。医師による診断によって、症状の背後にある原因を正確に突き止め、適切に診察してもらう事が重要です。
原因が分かれば、その内容に合わせて専門的な治療を受けられるので安心です。咳や頭痛が長引く場合は、まずは内科やかかりつけ医に相談しましょう。
その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません
咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。
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長引く咳には、
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放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。
症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。



