気管支喘息は、長引く咳の原因として最も多い病気であり、空気の通り道である気道に炎症が起こり狭くなることで様々な症状を引き起こします。中でも咳喘息は、喘鳴や息苦しさなどの症状が見られず咳だけが強く出るタイプの喘息です。軽度の喘鳴や息苦しさがあるものの、主な症状が咳である場合は、咳優位型喘息と呼ばれることがあります。これら喘息による咳嗽を喘息性咳嗽と呼びます。ここからは、咳喘息や喘息性咳嗽について紹介します。

喘息の病型と特徴

「喘息」と一言で表現しても、その病型は複数存在します。咳喘息は、喘鳴や息苦しさなどの症状が見られず咳だけが強く出ます。軽度の喘鳴や息苦しさがあるものの、主な症状が咳である場合に咳優位型喘息と呼ぶことがあります。以下に喘息全体の特徴を含めて説明します。

気管支喘息の特徴

気管支喘息とは、気道に慢性的な炎症があり空気の通り道が狭くなることで、夜間から早朝にかけて様々な症状を引き起こす病気です。主な症状としては、呼吸する時にゼーゼー・ヒューヒューと音が鳴る喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難、胸苦しさ、痰(たん)、咳などがあり頻度は変動します。時に激しい喘息発作(増悪;ぞうあく)を引き起こし、呼吸ができなくなります。

小児喘息の場合は、成長する過程で治癒することも多くありますが、成人では基本的に一生付き合っていく病気です。発作を繰り返すことで、だんだん気道が狭くなったまま広がらなくなって悪化していくこともありますので、吸入器などを使った適切な治療を継続することが大切です。

気管支喘息の発作が起こる原因

気温や気圧の変化、感染症、タバコの煙、ハウスダストなどのアレルゲン、運動、ストレスなどで発作が出る時があります。これらが気道を刺激することで、好酸球などの炎症細胞が活性化し、炎症を強めてしまうことで発作を引き起こします。

咳喘息の特徴

咳喘息は、咳だけが長く続く病気であり、喘鳴や呼吸困難、痰は伴わないものを言います。典型的な気管支喘息と同様に、季節やその日によって症状が変動することが多く見受けられます。特に大人では治療しないまま放置すると、約30%で喘鳴など咳以外の症状も出現してきますので注意が必要です。

喘息性咳嗽(がいそう)

夜間や早朝の咳が3週間以上長引いている場合は、喘息性咳嗽の可能性があります。喘息性咳嗽は咳喘息や咳優位型喘息による咳を含みます。自分の症状やタイミングを振り返り、主な症状のチェックリストを確認してみましょう。

以下の症状チェックリストでは、典型的喘息や咳優位型喘息と咳喘息の大きな違いとして、「呼吸する時にゼーゼー・ヒューヒューと音が鳴る」と「息苦しさと伴う咳が出る」の2点を挙げています。咳喘息では、基本的に咳以外の症状が見られないのが特徴です。

症状典型的喘息・咳優位型喘息咳喘息
呼吸音がゼーゼー・ヒューヒューと鳴る
咳が3週間以上続く
夜間や早朝に咳が出る
息苦しさを伴う咳が出る
特定の季節に症状が出る
香水や線香の香りなどで症状が誘発される

※ 気管支喘息を疑う際の問診項目は、上記以外にも多くあります。今回は、より代表的な特徴を抜粋して記載しています。

ただし、気管支喘息の診断や重症度を測るためには、呼吸機能検査などの数値もふまえて判断されますので、呼吸器内科などを受診してください。

喘息性咳嗽の治療・対処法

喘息性咳嗽の根底には気道の炎症があるため、それを抑えるために吸入薬や飲み薬など治療を続ける必要があります。また、周囲の環境にアレルゲンなどの刺激物質があると喘息発作(増悪)を起こしやすくなりますので、日常生活での対策も大切です。紙タバコだけでなく、加熱式タバコや電子タバコも、喘息のコントロール不良につながりますので、禁煙は必須です。

薬物治療

気管支喘息や咳喘息と診断された場合は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬を中心に、気道を広げる気管支拡張薬などを併用することになります。また、アレルギー性鼻炎を合併している場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬といった抗アレルギー薬を服用します。薬を正しく続けることで、症状のコントロールを図ります。

アレルゲンを除去する

気管支喘息では様々な環境要因によって悪化するため、花粉やダニ、ホコリなどのアレルゲンを取り除くことが大切です。床や畳、ホコリが溜まりやすい場所、寝具の掃除を定期的に行いましょう。

ワクチンを接種する

インフルエンザワクチンを接種することで、喘息症状が悪化する頻度が低下するとされています1)。RSウイルス感染も喘息症状を悪化させますが、最近成人(60歳以上)でもRSウイルスワクチンを接種できる様になりました。

1) Watanabe S et al, Allergol Int. 2005; 54: 305-9


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。