乾燥する季節の屋外や冷房の効いた室内にいるときに、喉のイガイガ感が悪化して咳が止まらなくなったことはありませんか。

その不快な症状は、多くの場合「喉の乾燥」が引き金になっています。一時的なものと軽く見てしまいがちですが、体からの大切なサインである可能性もあります。

この記事では、喉が乾燥する原因や、日常生活でできる咳の予防・対処法について解説します。

喉が乾燥する主な原因

喉の粘膜が乾燥すると刺激に弱くなり、咳が出やすい状態になります。咳が出やすくなる原因は1つではなく、生活習慣や環境、体調など複数の要因が関係していると考えられています。ご自身に合った対策を見つけるため、まずは代表的な4つの原因を見ていきましょう。

空気の乾燥

空気が乾燥していると、呼吸を通じて気道の潤いが奪われやすくなり、喉や気管支の粘膜も乾きやすくなります。粘膜が潤いを失うと、本来備わっている防御機能が十分に働かず、ホコリやウイルスなどの異物に対する抵抗力が低下しやすくなります。そのため、普段は気にならないような小さな刺激でも過敏に反応し、痰を伴わない「コンコン」「ケンケン」といった空咳が出やすくなってしまうこともあるのです。

特に冬場は、外の湿度が低くなるだけでなく、室内でも暖房器具を使うとさらに乾燥が進みます。エアコンやストーブなどで室温を快適に保っているつもりでも、かえって喉の乾燥を招く原因になっていることも少なくありません。

ストレスや緊張による乾燥

精神的なストレスや過度な緊張も、喉の乾燥を引き起こす要因の一つです。私たちの体は自律神経によってバランスを保っていますが、強いストレスを感じると交感神経が優位になる影響で唾液の分泌が減り、口や喉の粘膜の潤いが奪われてしまいます。本来、唾液には粘膜を潤し保護する働きがあります。

しかし、分泌が減ると口内が乾きやすくなり、喉の乾燥感や咳につながることも少なくありません。

薬の副作用による乾燥

服用している薬によっては、副作用として喉の乾燥が表れることがあります。薬は病気の治療や症状の緩和に役立ちますが、一方で意図しない作用をもたらすことも少なくありません。たとえば、花粉症などアレルギー症状の治療に使われる抗ヒスタミン薬は、鼻水を抑えると同時に唾液の分泌も減らす場合があります。

高血圧の治療薬、抗うつ薬、利尿薬なども、口や喉の渇きを引き起こしやすい薬の代表例です。複数の薬を同時に服用していると、それぞれの影響が重なり、乾燥症状が強くなることも考えられます。

もし気になる症状があれば、自己判断で服用をやめるのではなく、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

口呼吸による乾燥

鼻呼吸では、吸い込んだ空気が鼻腔で適度に加湿され、喉の粘膜も守られやすくなります。

一方、口呼吸の場合は冷たく乾燥した空気が直接入るため、粘膜から水分が奪われて乾燥しやすい状態になります。特に睡眠中は、無意識のうちに口呼吸へ切り替わりがちです。鼻づまりがあると、なおさら口呼吸をせざるを得ません。

朝起きたときに喉がひどく渇いていたり、イガイガするような痛みを感じたりする場合は、睡眠中の口呼吸が原因になっているかもしれません。

喉の乾燥を防いで咳を止める方法

喉の乾燥による咳は、日常のちょっとした工夫で和らげることができます。ここでは、生活の中で手軽に取り入れられる7つの対処法を紹介します。

室内の湿度を適切に保つ

空気が乾燥しやすい季節やエアコンを長時間使う環境では、室内の湿度を意識して管理することがポイントです。喉の粘膜が快適に感じる湿度は、一般的に40〜60%程度とされています。

加湿器で湿度を調整するのが手軽ですが、加湿器がない場合は濡れたタオルを部屋に干しても乾燥対策になります。ただし、湿度が高くなりすぎるとカビやダニが繁殖する原因にもなるため、加湿器の向きや加湿のしすぎ、加湿器内のカビの発生には十分注意しましょう。

水分を摂取する

喉の乾燥を防ぐには、体の中から潤いを補うことも大切です。水分を摂る際は、一度にたくさん飲むよりこまめにとることを心がけましょう。水やお茶などを少しずつ口に含み、喉を潤すように飲むのがおすすめです。

咳が出始めたときや、喉に違和感を覚えたときにも水分補給を意識すれば、症状の緩和につながることがあります。

うがいをする

うがいは、喉についたホコリやウイルスを洗い流すだけでなく、粘膜を直接潤す効果も期待できます。外出から帰宅したときはもちろん、空気が乾燥していると感じたときや、喉がイガイガするときにもおすすめです。水道水でのうがいでも十分ですが、ぬるま湯を使うと喉への刺激が少なく済みます。

マスクを着用する

マスクは咳の飛沫拡散を防ぐだけでなく、喉の保湿にも効果的です。自分の呼気の水分がマスク内にとどまるため、乾燥した空気が喉に直接当たるのを防げます。特に夜間や就寝中の口呼吸による喉の乾燥が気になる方は、マスクを着用して眠るのも一つの方法です。

のど飴(ノンシュガー)やトローチを舐める

のど飴やトローチは唾液の分泌を促し、喉の粘膜に潤いを与える効果があります。唾液には細菌の増殖を抑える作用もあり、喉の健康維持に役立つでしょう。ハチミツ成分入りののど飴は、やさしい甘さで喉をしっとりと潤してくれるのでおすすめです。

なお、市販のトローチを使用する際は、決められた使い方や量を守ることが大切です。適切に使用しないと、効果が不十分になったり副作用が出たりする恐れがあります。用法・用量は必ず確認しましょう。

漢方薬を利用する

咳が続く場合には、漢方薬という選択肢もあります。たとえば、「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」は、体の内側から気道を潤す生薬を含む漢方薬です。空咳が続いたり、痰が切れにくく喉にひっかかったりするような不快な症状を和らげる効果が期待できます。

体質や症状によって適したタイプは異なるため、漢方薬を使用したい場合は、専門の医師や薬剤師に相談し自分に合ったものを選びましょう。

ツボ押しをする

東洋医学では、咳に関連するツボをやさしく刺激することで、症状が和らぐことがあるといわれています。

肘の内側のシワの上にある「尺沢(しゃくたく)」や、鎖骨の下のくぼみにある「中府(ちゅうふ)」などが咳の症状に使われることが多いツボです。心地よいと感じる程度の強さで、ゆっくりと押してみてください。

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咳が長引いて治らないときは

咳は体の異常を知らせる大切なサインです。咳がなかなか治まらなかったり、他の症状が見られたりする場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

たとえば風邪の後に咳だけが残る場合、気管支喘息や咳喘息、アトピー咳嗽といった病気の可能性があります。胃酸が逆流する胃食道逆流症も、しつこい咳の原因となることがあります。

以下のような症状が見られる場合は、放置せずに呼吸器内科など専門医に相談しましょう。

  • 咳が3週間以上続いている。
  • 黄色や緑色など、色のついた痰が大量に出る。
  • 呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)がする。
  • 息切れや胸の痛みを感じる。
  • 高熱がある、または微熱が続いている。
  • 食欲がなく、急激に体重が減少した。

これらの症状は、気管支炎や肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がんといった重大な病気の兆候である可能性もあります。

病院で検査を受けて、原因を特定すれば、適切な治療が受けられるでしょう。


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。

長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。

放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。

症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。