喉の痛みに加えて咳も止まらない。「ただの風邪だろう」と思っていても、症状が長引くと「何か別の病気では?」と不安になるものです。

つらい症状は日常生活に支障をきたします。こうした症状は、体が発する重要なサインかもしれません。喉の痛みや咳は風邪だけでなく、ほかの病気も考えられるため、早めの対処が早期回復につながります。

この記事では、喉の痛みと咳が同時に表れる場合に考えられる病気や、症状の緩和方法、受診のタイミングについて解説します。

喉の痛みと咳が両方出るときに考えられる病気

喉の痛みと咳が同時に現れる場合、その背後には様々な病気が隠れている可能性があります。原因となる病原体やアレルギー反応など、発症のきっかけは実に多種多様です。

ここでは、症状を見極める参考として、代表的な病気について紹介します。

風邪

風邪は、主にライノウイルスなど複数のウイルスが鼻や喉の粘膜に感染することで発症します。喉の痛み、乾いた咳、鼻水、くしゃみ、微熱が主な症状です。

ちなみに、風邪を引き起こすウイルスは200種類以上と多く、どのウイルスが原因なのかを正確に特定するのは難しいとされています。そのため、ウイルスそのものを排除するのではなく、症状を和らげること(対症療法)を中心にして治療します。

インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスへの感染によって発症する病気です。風邪と似ていますが、38度以上の高熱や強い喉の痛み、激しい咳などが急速に現れる点が特徴です。全身の倦怠感や関節痛、筋肉痛も伴い、風邪より重症化しやすい傾向があります。

咽頭炎や扁桃炎

ウイルスや溶連菌などの細菌感染で、喉奥の咽頭や扁桃腺が炎症を起こす病気です。つばを飲み込むのもつらいほどの強い痛みが特徴で、咳や発熱、声がれを伴います。

喉の痛みの原因が細菌の感染なら抗菌薬が必要なこともあるため、自己判断せず専門家に相談しましょう。

気管支炎

気管支炎は、ウイルスや細菌の感染によって気管支に炎症が起こる病気です。風邪をひいた後に、咳や痰だけが長引く場合に疑われることが多く、風邪と併発して発症することも少なくありません。

主な症状は、痰の絡む湿った咳や、長引く乾いた咳、軽い喉の痛み、胸の違和感などです。気管支炎が悪化すると肺炎に進行する場合もあるため、咳がなかなか治まらないときは、無理をせず医療機関に相談しましょう。

副鼻腔炎

副鼻腔炎は、鼻の周りにある空洞(副鼻腔)が炎症を起こすことで発症します。いわゆる「蓄膿症」とも呼ばれ、鼻づまりや粘り気のある色のついた鼻水が特徴的です。

副鼻腔に溜まった鼻水が喉に流れ込む「後鼻漏」が続くと、喉の奥に不快な違和感が出て、これが刺激となって痰の絡む咳や喉の痛みを引き起こすことがあります。鼻づまりや咳、喉の痛みが長く続く場合は、副鼻腔炎の可能性もあると考えましょう。

アレルギー性鼻炎

ハウスダストやダニ、花粉、動物の毛など、身の回りのアレルゲンが原因で起こる鼻炎です。多くの人が悩まされている花粉症も、アレルギー性鼻炎の一種です。主な症状はくしゃみや鼻水ですが、喉の粘膜も刺激されるため、イガイガとしたかゆみや痛みに加えて、乾いた咳が出ることがあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19

新型コロナウイルスへの感染でも喉の痛みが出ます。喉の痛みのほかには咳や発熱、強い倦怠感が代表的な症状です。嗅覚や味覚の異常も特徴の一つで、症状には個人差があります。

また、新型コロナウイルスには複数の型があり、変異株によって症状の頻度に違いがあると報告されています。たとえば、オミクロン株ではデルタ株と比べて咽が痛むことが高く、嗅覚・味覚障害の頻度が低いとされています。このように「どの型に感染したか」によって症状の傾向が変わるため、同じコロナ感染でも人によって現れる症状が大きく異なることがあります。

喉が痛くて咳が出るときの対処法

つらい喉の痛みや咳は、日々のセルフケアで一時的に緩和できるものもあります。あくまで応急的な対処にすぎないため、症状が長引いたり強くなったりする場合は、自己判断せずに薬剤師や医師に相談しましょう。そのうえで、無理のない範囲で取り入れられる日常の工夫が、つらい症状を少し和らげる助けになります。

うがいをして喉を清潔にする

うがいは、喉の粘膜についたホコリやウイルス、細菌などを洗い流すのに効果的です。特に、帰宅してすぐや空気が乾燥する就寝前、朝起きたときなどのタイミングで習慣にすると良いでしょう。ぬるま湯や塩水で喉の奥まで優しく潤すことで粘膜を清潔に保ち、炎症の悪化を防ぎます。

温かい飲み物で喉を潤す

喉が乾燥すると粘膜の防御力が下がり、咳が出やすくなります。白湯やハチミツ入りの紅茶、ショウガ湯、麦茶、ハーブティーといった温かい飲み物は、喉を内側から優しく潤し、痛みや刺激の緩和につながります。

さらに温かい飲み物の蒸気によって、喉や気道をしっとりと保ち、咳が出にくくなる効果も期待できるでしょう。ハチミツを加えることで咳を和らげる効果があることが、動物実験で示されています。また、ハチミツは疲労回復への効果も期待できます。喉のケアと同時に体の調子を整える助けになるでしょう。

のど飴(ノンシュガー)やトローチを舐めて炎症を和らげる

のど飴やトローチは、唾液の分泌を促し、喉の潤いを保つのに役立ちます。殺菌や抗炎症作用のある成分が配合されている市販品があり、これを使えば、喉の痛みを一時的に和らげてくれるでしょう。メントールやハーブ入りの製品など、清涼感のあるタイプも人気があります。

ただし利用する際はあくまで一時的な緩和策として考え、症状が長引く場合は薬剤師や医師に相談しましょう。

喉への刺激を避ける

喉が炎症を起こしているときは、とても敏感になっています。タバコの煙やアルコール、香辛料の強い料理、熱すぎる飲食物は、喉への刺激となるため、できるだけ控えましょう。食事はおかゆやスープ、プリンなど、喉ごしの良いものをゆっくりと食べるのがおすすめです。

咳や喉の痛みで病院を受診する目安は?

ほとんどの咳や喉の痛みは、時間の経過とともに自然に良くなります。しかし、中には専門的な診察や治療が必要なケースもあります。次のような症状が見られるときは、迷わず医療機関を受診しましょう。

咳が長引いて治まらない

咳が長引いて日常生活に支障をきたしている場合は、呼吸器内科や内科を受診しましょう。高熱や痰の増加、息苦しさを伴う場合には、肺炎や気管支炎などのリスクが考えられるため、早めに医療機関を受診することが大切です。また、夜間の咳で眠れない、咳がひどく日常生活に支障が出ている場合も、専門医を訪ねる目安となります。

原因がはっきりしない咳は、まず総合内科や耳鼻咽喉科で診察を受けてみてください。

喉が痛くて食べ物や飲み物が飲み込めない

喉の痛みが強く、食べ物や飲み物を口にするのがつらい場合は、急性扁桃炎や咽頭炎の可能性があります。高熱や声枯れを伴うときは早めに受診しましょう。特に水分さえ摂れない場合は、脱水を防ぐために点滴などの処置が必要になることもあります。こうした症状がある場合は、無理せず医療機関を受診しましょう。

呼吸時に息苦しさを感じる

咳や喉の痛みに加え、息切れや呼吸がしづらいと感じるときは、肺炎や喘息の発作、心臓や肺の重大な病気のサインかもしれません。安静にしていても息苦しい場合は、早急に医療機関を受診してください。

咳と同時に血が混じる痰や膿のような痰が出る

咳と一緒に出る痰の色や状態は、体の重要なサインです。特に、以下のような症状が見られるときは特に注意が必要です。

痰に血が混じる場合(血痰)

痰に血が混じる「血痰」は、注意が必要なサインです。激しい咳で喉が傷ついただけの場合もありますが、気管支拡張症や肺結核、肺がんといった病気が隠れている可能性も考えられます。自己判断せず、必ず医療機関で相談してください。

黄色や緑色の膿のような痰が出る場合

黄色や緑色をした膿のような痰は、細菌感染を起こしているサインです。肺炎や気管支炎などが疑われ、治療が必要になる可能性もあります。こちらも放置せずに、医師の診察を受けましょう。

咳が出るときに胸の痛みを伴う

咳をするたびに胸が痛む場合、単なる筋肉痛だけでなく、胸膜炎や気胸など肺の疾患が隠れていることもあります。

深呼吸や体を動かしたときに痛みが増す場合は、早めに内科や呼吸器内科で相談しましょう。


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。

長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。

放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。

症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。