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難治性の慢性咳嗽には咳過敏（せきかびん）が隠れている

　わが国で実施された一般内科医、呼吸器内科医、耳鼻咽喉科医を対象としたインターネット調査では、診療科にかかわらず、慢性咳嗽患者さんの約20％が、治療を行っても咳が抑えられない「難治性の慢性咳嗽」に該当することが報告されています11）。この「難治性の慢性咳嗽」では、わずかな刺激であっても咳が抑えられなくなる咳過敏という状態が隠れている可能性があります。
　このような咳に対する対処法として、咳が出そうな時に唾を飲み込む、ミント風味のトローチを舐める、水分を十分にとる、鼻呼吸や腹式呼吸を意識的に行うなどが挙げられます（図3）12）。また、咳が出るタイミングやきっかけを自覚し、できる範囲でそれらを避けることや、ストレスを上手に管理することも大切です。繰り返しになりますが、咳が続いて意識が遠のいてしまったことがあり、咳失神を起こす不安がある場合には、自動車の運転は控えていただきたいと思います。

　特に、難治性の慢性咳嗽患者さんでは、咳ぜん息をはじめとした原因と考えられる病気を治療しても治まらず、会話や食事中に、咳を我慢しようとしても抑えられないことで、日常生活に支障をきたし、思い悩まれる方はたくさんいらっしゃいます。刺激臭、のどの乾燥がある時、緊張時、さらには原因がみあたらないのに突然咳が出てしまうという声もよく聞きます。
　長引く咳に悩まれている方は、ぜひ医師にご相談ください。咳がよくなり、映画鑑賞、友人との食事、仕事でのパフォーマンスなどこれまで諦めていたことを、ひとつでもできるようになることを願っています。

Q&A

笹川　詳しくお話しくださりありがとうございました。ここでいくつかご質問させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。

松本　どのような時に咳が出るのか、また、自分の咳を10段階で評価し、どの時期にどの程度ひどいのかを記録しておくとよいでしょう。たとえば、「食べ物がのどを通る時に激しく咳き込む」、「季節の変わり目で咳がひどい時を10とすると、今は2です」などと説明いただくと医師も状態を把握しやすいです（図4）。ただし、あまり気にしすぎると、ストレスになってしまう場合がありますので、無理のない範囲で行ってください。

松本　咳で圧迫骨折を起こすことがありますし、そこには骨粗しょう症という病気が隠れている可能性もあります。また、加齢とともに、咳で腹圧がかかることにより尿漏れを起こすリスクは高まります。内臓の病気としては、先ほどご紹介した胃食道逆流症が複合的にかかわっていることも考えられます。
　気になる症状がある場合には、一度、医療機関を受診することをお勧めいたします。

松本　花粉症とぜん息は、いずれも長引く咳の原因として、よくみられる病気です。これらは炎症が起きている場所に違いがあり、花粉症では主にのどから鼻、ぜん息では主に気管支で炎症が起きています。最初は花粉症だけであっても、病状が悪化するにつれて、炎症が鼻から気管支へと広がり、ぜん息を発症することもあります。咳が長引くようであれば医師に相談しましょう。

笹川　今回のご講演では、咳といっても一括りにはできず、その頻度や重症度、原因となる病気などは様々であることを学べました。咳が長引いている方は、一度、医療機関を受診して、相談することが大事だと感じました。

松本　咳に関する悩みは多様で、日常生活の様々な場面で問題となっています。長引く咳は、生活の質を低下させる要因になりますから、一人で悩まず、気軽に医療機関に相談していただきたいと思います。