「家に帰ると必ず咳が出てしまう…」そんな経験はありませんか?乾燥や温度差、アレルゲン、呼吸器・アレルギー疾患など様々な原因が考えられます。この記事では、家に帰ると咳が出る原因を詳しく解説し、具体的な対処法をご紹介します。

家に帰ると咳が出る原因

咳が出る原因として、身近な生活環境が大きく関わっていることがあります。ここでは、室内で咳を誘発させるいくつかの原因について解説します。

室内の乾燥

空気の乾燥によって喉や気道の粘膜は潤いを失います。乾燥した粘膜は刺激をうけやすくなり、防御反応として咳が反射的に起こります。また風邪などの原因となるウイルスや細菌も増殖しやすくなります。

室内外の温度差

夏から秋、冬にかけて気温が低下していく時期や、1日の中で最高気温と最低気温の温度差が大きい場合に咳が出やすくなります。特に冷気を吸い込むことで気道が刺激されて咳が出てしまいますので、季節の変わり目の他、エアコンの冷気などにも注意が必要です。

アレルゲン

ハウスダスト

布団やカーペットに溜まりやすいハウスダストは、咳の原因となることがあります。特に布団やカーペットに潜むダニは、アレルギーの原因として最も多いとされています。ダニの死骸やフンがアレルギー反応を引き起こし、咳が出ることがあります。

ペットのフケ

ペットを飼っているご家庭では、ペットのフケや毛が原因でアレルギー症状が出る場合があります。

カビ

浴室やキッチン、エアコンの中など、湿気の多い場所に発生しやすいカビも、アレルギーの原因となります。

化学物質による刺激

洗剤や柔軟剤、芳香剤など、家庭で使用される化学物質が気道を刺激し、咳が出る場合があります。

呼吸器・アレルギー疾患

家に帰ると咳が出る原因として、呼吸器・アレルギー疾患が隠れている可能性もあります。ここでは代表的な疾患を3つ紹介します。

喘息

気管支喘息とは、気道に慢性的な炎症があり空気の通り道が狭くなることで、夜間から早朝にかけて様々な症状を引き起こす病気です。主な症状としては、呼吸する時にゼーゼー・ヒューヒューと音が鳴る喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難、胸苦しさ、痰(たん)、咳などがあり頻度は変動します。時に激しい喘息発作(増悪:ぞうあく)を引き起こし、呼吸ができなくなります。

小児喘息の場合は、成長する過程で治癒することも多くありますが、成人では基本的に一生付き合っていく病気です。発作を繰り返すことで、だんだん気道が狭くなったまま広がらなくなって悪化していくこともありますので、吸入器などを使った適切な治療を継続することが大切です。

咳喘息

咳喘息は、咳だけが長く続く喘息の亜型であり、喘鳴や呼吸困難、痰は伴わないものを言います。典型的な気管支喘息と同様に、季節やその日によって症状が変動することが多く見受けられます。特に大人では治療しないまま放置すると、約30%で喘鳴など咳以外の症状も出現してきます1)ので注意が必要です。

1) Matsumoto H et al, J Asthma. 2006; 43: 131-5

    後鼻漏(こうびろう)

    鼻と喉はつながっているため、花粉症(季節性のアレルギー性鼻炎)や慢性副鼻腔炎によって出た鼻水が、喉の奥に流れ込むことがあります。このことを後鼻漏(こうびろう)と呼び、流れ込んだ鼻水が喉や気道の神経を刺激することで咳症状を引き起こします。なお、このような症状を、「痰が絡む」と表現する患者さんが時々おられますが、痰は気管支の奥から上がって来るものであり別物です。

    家に帰ると咳が出る人に試してほしい対処法

    日常生活の中で身近な方法で対処できることがあります。ここでは、咳を予防するための主な方法を紹介します。

    部屋の湿度を適度に保つ

    40~60%が適切な湿度とされています。水やぬるま湯をこまめに飲み、加湿器などを使って喉が乾燥しないようにしましょう。加湿器がない場合は、タオルなどを濡らして室内に干しておくのも効果的です。ただし、60%以上になるとダニやカビが繁殖しやすくなりますので、加湿器の洗浄を含めて注意が必要です。

    室内を定期的に掃除する

    室内のダニやカビ、ホコリといったアレルゲンが咳を引き起こすこともあるため、こまめに掃除をして取り除きましょう。特に、加湿器にカビが繁殖し吸い込むと逆効果となります。時に肺炎を起こす可能性もあるので、週1回程度は加湿器の洗浄を心がけてください。

    対処しても咳が改善しない場合

    自己判断で薬を服用したり、放置したりせず、症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

    呼吸器内科

    慢性的な咳が続く場合、まずは呼吸器内科を受診しましょう。肺に異常がないか確認するため、胸部X線(レントゲン)検査なども行うこともあります。

    耳鼻咽喉科

    鼻水や鼻づまり、後鼻漏や喉の違和感を伴う場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。鼻炎や副鼻腔炎などがないか確認するため、鼻の所見を診て副鼻腔X線(レントゲン)検査などを行うこともあります。

    まとめ

    「家に帰ると咳が出る」という症状は、様々な原因が考えられます。まずは、室内の環境を整え、生活習慣を見直してみましょう。それでも改善しない場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。


    その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

    咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。