仕事や子どもの学校の行事、映画鑑賞中など「咳を出してはいけない」と考えてしまうほど、かえって咳が出てしまい止まらなくなることはありませんか。特定の場面でストレスや緊張を感じることで起こる咳は、病院で薬を処方されても、なかなか治まらないケースも少なくありません。

このコラムでは、ストレスや緊張が原因で引き起こされる咳の特徴や、考えられる対処法のポイントを紹介します。

ストレスと咳の関係は?

ストレスや緊張を感じることによって、咳が止まらなくなることがあります。仕事の大事な商談や子どもの学校行事、映画鑑賞、電車や飛行機の中など「咳を出してはいけない」と考えてしまう環境になると、意に反して咳が止まらなくなることがあります。

ストレスによる咳は小学生~思春期にかけて多いとされていますが、様々なストレスにさらされる成人(特に女性)にも多く見られ、日常生活で悩まされているケースも多いのが実情です1)~3)

1) 日本呼吸器学会, 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019. メディカルレビュー社.
2) Irwin RS et al, Chest 2006 129(1 Suppl):174S-9S
3) Mastrovich JD et al, Allergy Ashma Proc. 2002; 23 : 27-33

ストレスが原因と考えられる咳の特徴

ストレスが原因と考えられる咳とストレス以外の原因で咳がでている場合を区別することは難しいですが、以下の2つの特徴がある場合は、ストレスが原因の可能性があります。

1.特定の場面や状況で咳が出る

常に咳が出ているとは限りません。何かに集中して取り組んでいる時には咳が出ないことが多く、その反面で職場や学校といった公共の場や緊張状態にある時、ストレスを受けている時に咳が誘発されやすくなってしまう傾向があります。

2.咳が癖になっている

常に喉に異物感があったり、人前で話すときに緊張をほぐして声を出しやすくする目的で、咳が癖になってしまっていることも多く見られます。このような場合は、咳を出すとスッキリ感を得られることからさらに習慣化していく傾向がみられます。

ストレスによる咳の止め方・対処法

ストレスが原因で引き起こされる咳は、風邪や気管支炎などが原因ではないため、薬の効果が乏しいことが多いとされています。一方で、ストレスの原因を取り除くことやカウンセリングなど薬を使わない治療が有効なこともあり、日常生活の中で簡単にできることもありますのでそのポイントを紹介します。またこれらの咳の止め方・対処法は、ストレスによる咳に限らず長引く咳一般に有効です。

1.咳が出そうな時に唾をのみ込む

「これから咳が出そう」「いつも〇〇の時に咳が出る」というシーンになったら、咳が出るのを少し我慢して唾をのみ込んでみましょう。また、空気が乾燥していると感じたら早めに飲み物で喉を潤すことも、大事な時に咳が出てしまうリスクの軽減に効果的です。

2.ゆっくり鼻呼吸・腹式呼吸することを意識する

口呼吸をすると外気が直接喉に入り刺激を感じやすくなりますので、3~4分かけてゆっくり鼻呼吸・腹式呼吸をしてみましょう。気持ちのリフレッシュにもなりますので、できれば1日4~5回程度を目安に行うことをお勧めします。

3.咳が出るタイミング・きっかけを自覚する

ストレスを感じる場面や状況、咳が止まらず困った経験を紙やスマホに記録して整理しましょう。自分の状況を「見える化」することで、心の中にある不安や怒りなどを客観視することに役立ちます。

4.生活習慣を見直す/できることから始める

ストレスを感じる場面を整理できたら、それを和らげるためにできることから生活習慣を見直してみましょう。たとえば、以下の点が挙げられます。

睡眠時間を確保する

十分な睡眠時間がとれるとホルモンバランスが安定します。個人差はありますが、7~8時間を目安に「しっかり眠れた」と実感できる睡眠ができることが大事です。眠っている間に腸や脳の負担をかけないよう就寝前3時間以内の食事は控えることや、スムーズに入眠できるよう就寝前は部屋の明かりを暗めにすることも良いとされています。

適度な運動を取り入れる

1日30分~1時間歩くなど、継続できる範囲で軽い運動を習慣づけるとセロトニンやエンドルフィンなどストレスを解消するホルモンが分泌されると言われています。また、適度に疲労を感じることで寝つきにも良いとされます。

誰かと会話する時間を作る

友人や家族など気兼ねなく話せる人に対して、感情を口に出すことで自分が何を考えているのか整理できスッキリします。気兼ねなく話せる人がなかなか思いつかない場合は、カウンセリングを受ける方法もあります。


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

せきが8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは?」をご覧いただき、せきで困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。