咳をすると胸のあたりが痛くなるのはもしかして病気?対処法は?
2025年10月31日

咳が長引いて、胸のあたりに痛みを感じたことがある方も多いのではないでしょうか。このような症状は、咳のし過ぎによる筋肉の疲労が原因となることもありますが、慎重な対応を要する病気が背景に潜んでいる場合もあります。
この記事では、咳に伴う胸のあたりの痛みの主な原因についてご紹介するとともに、症状を和らげるための対処法や医療機関を受診する目安についても解説していきます。
咳をすると胸のあたりが痛くなる原因
まずは、咳が続くことによって胸のあたりが痛む原因を探っていきます。痛みの種類や他に出ている症状によっては、原因をある程度推測することができます。
咳のし過ぎによる痛み
長期間にわたって咳が続くと、首や肩、背中、胸部、腹部などの筋肉に負荷がかかり、痛みを感じることがあります。これは、咳をするたびに横隔膜や肋間筋といった呼吸に関わる筋肉が収縮と弛緩(しかん)を繰り返すことで、筋肉に疲労がたまりやすくなるため、と考えられています。この負荷によって、筋肉痛に似た状態を引き起こすことがあります。
さらに、咳やくしゃみが激しい場合には、肋間神経(ろっかんしんけい)が刺激されて鋭い痛みを感じるケースも少なくありません。このような咳と胸痛を伴う症状は、気管支炎や気管支喘息、咳喘息、あるいは百日咳や新型コロナウイルス感染症の後遺症などでもみられます。また、発熱や頭痛、倦怠感を伴う風邪やインフルエンザが長引いたときも同様に、胸のあたりの痛みを感じることがあるでしょう。さらに、風邪やインフルエンザが悪化して「肺炎」や「気管支炎」、まれに「心筋炎」などを発症した場合にも、咳や炎症によって胸のあたりの痛みが生じることがあります。
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ろっ骨の疲労骨折
過度に激しい咳や長期間続く咳は、ろっ骨に影響を与える可能性があります。ろっ骨は内臓を保護する重要な骨格ですが、咳の衝撃が繰り返し加わることで、疲労骨折を引き起こすケースも報告されています。
疲労骨折とは、一度の大きな外力ではなく、比較的小さな力が同じ部位に繰り返し作用することで、骨にひびが生じる状態です。咳をするたびにきしむような痛みを感じたり、深呼吸や体をひねる動作で痛みが強くなったりする場合は、疲労骨折の可能性も考えられます。最初は微細なひびでも、咳による負担が加わり続けることで、完全な骨折に至ってしまうケースも少なくありません。
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肺の病気
特に、何らかの原因によって肺から空気が漏れて、肺がしぼんでしまう「気胸」や、細菌やウイルスの感染で肺に炎症が起きる「肺炎」、結核菌によって発症する「肺結核」などが挙げられます。これらの病気で炎症が肺を覆う「胸膜」にまで及ぶと、「胸膜炎」を引き起こし、これが胸痛の直接的な原因となります。
胸膜炎とは、胸膜が炎症を起こし咳や深呼吸のたびに鋭い胸の痛みが強くなる病気です。炎症の影響で「胸水」と呼ばれる水が肺の外側にたまります。胸水が多量にたまると、肺が圧迫されて息苦しさや動機を感じるようになります。
また、血痰や発熱、倦怠感、体重減少などの症状がみられる場合もあり、早期発見のためにも注意が必要とされています。
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咳が出て胸のあたりが痛むときの対処法
咳による胸のあたりの痛みを和らげるために、ご家庭でできる対処法をいくつかご紹介します。ただし、症状が続く場合や痛みが強い場合は、早めに医療機関にご相談ください。
安静にして身体を休める
咳は体力を消耗するため、まずは安静にすることを第一に考えましょう。激しい運動や作業は咳を誘発する原因となるため、身体を休めることで咳の頻度そのものを減らすことができます。また、楽な姿勢もしくは横になり、ゆっくりと腹式呼吸をすると胸郭の緊張がほぐれ、痛みの軽減につながります。
水分補給をこまめに行う
咳を悪化させないためには、喉や気道の乾燥を防ぐことが大切です。こまめな水分補給を心がけ、喉を常に潤しておきましょう。冷たい水はかえって喉を刺激してしまう可能性があるため、体を温める意味でも、常温の水や温かい飲み物を選ぶと良いでしょう。
部屋を加湿する
空気が乾燥していると、咳は悪化しやすくなります。特に就寝中は口呼吸になりがちで、喉が乾燥して咳き込むことも少なくありません。加湿器などを活用して室内の湿度を適切に保ち、乾燥による咳の悪化を予防しましょう。厚生労働省も「建築物環境衛生管理基準」で、室内の湿度を40~70%に保つことを推奨しています。
もし加湿器がない場合でも、濡らしたタオルを室内に干したり、就寝時に濡れマスクを着用したりする方法で湿度を補うことができます。ただし、湿度が高くなりすぎるとカビやダニが繁殖する原因にもなるため、加湿器の向きや加湿のしすぎ、加湿器内のカビの発生には十分注意しましょう。
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喉を温める
喉を温めることも症状の改善に役立ちます。マフラーやネックウォーマーなどで首の周りを覆い、冷たい外気が気道を直接刺激するのを防ぎましょう。また、体の内側から温めるのも効果的です。温かい飲み物は喉に潤いを与え、保湿効果を高めてくれます。特におすすめなのがハチミツを入れたホットドリンクです。ハチミツには咳を抑える効果があることが報告されています。
咳を止める方法について、さらに詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
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出典
咳で起こる胸のあたりの痛みについてのよくある質問
「何科を受診すれば?」「体の痛みが続くけれど大丈夫?」など、咳による胸のあたりの痛みでよくある質問にお答えします。なお、医療機関への受診を考えている人は、以下のページも活用してみてください。
咳で起こる胸のあたりの痛みは何科を受診したら良い?
咳と胸あたりの痛みが続く場合は、呼吸器内科、または一般内科を受診しましょう。診察では、痛みの原因が咳による筋肉痛なのか、それとも他の病気が隠れているのかを判断するため、胸部X線検査(レントゲン)などが行われます。この検査によって、肺炎や肺がんなどが隠れていないかを確認できます。適切な治療につなげるためにも、自己判断せずに早めに相談しましょう。
咳が治まっても、胸のあたりの痛みが続くことはありますか?
痛みが起きる原因によっては、咳が治まった後も痛みが続くケースもあります。たとえば、咳の影響でろっ骨の疲労骨折を起こしている場合、骨が修復されるまで違和感や痛みが残ることも考えられます。また肺炎や胸膜炎などに対しては抗菌薬が必要であり、炎症が治まるまでに時間がかかることも少なくありません。
もし痛みがなかなか治まらず、不安を感じる場合は、無理をせず医療機関に相談することをおすすめします。
その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません
咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。
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長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。
放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。
症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。



