気管支喘息や咳喘息、アトピー咳嗽、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの病気や風邪をひいた時に、激しい咳が出ることで吐き気をもよおすことも少なくありません。場合によっては、胃食道逆流症といった消化器の病気や新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎などの感染症、肺がんなどが原因であることも考えられます。嘔吐にまで至ってしまうと、体力的にも精神的にも苦痛を伴います。今回は、咳で吐き気をもよおしてしまう時の原因や対処法、咳の抑え方を解説します。

咳で吐き気をもよおす原因

咳で吐き気をもよおす原因として、咳という症状そのものによって誘発される場合と消化器の病気が根底にある場合があります。場合によっては、新型コロナウイルスやマイコプラズマ肺炎などの感染症、肺がんなどが潜んでいることが原因で激しい空咳(痰が絡まない咳)を引き起こしている可能性もあります。吐き気だけでなく胸に痛みや違和感があるようでしたら、呼吸器内科をはじめとする医療機関を早めに受診し検査することをおすすめします。

激しい咳によって胃に圧力がかかる

咳は、肋骨を折るほど身体に大きな圧力をかける症状です。その圧力が胃にかかると胃酸が逆流して吐き気につながることがありますので、咳の原因となっている病気を調べ治療することが大切です。

消化器の病気がある

長引く咳を引き起こす原因の一つとして、胃酸が食道を逆流する胃食道逆流症(逆流性食道炎)があります。胃酸が食道の神経を刺激したり、気道を刺激して咳を引き起こすとされていますが、胃酸以外の胃の内容物の逆流が原因となることもあります。同時に胸やけや呼吸困難感、嘔吐を伴うことがありますので、医療機関で胃食道逆流症と診断された場合は胃酸を抑える薬や消化管の動きを改善する薬などで治療します。また食生活習慣の改善も大変重要です。就寝前3時間以内の食事は控え、チョコレートやアルコール、カフェインの摂取や唐辛子などの香辛料、酸の多い食事、脂っこい食事は控えましょう。

気管支喘息の発作が出ている

気管支喘息と診断されている患者さんでは、気道炎症が悪化することで激しい咳発作が引き起こされることがあります。なお、咳止めによっては喘息発作への使用が禁止されているものもありますので、医療機関を受診して適切な治療を受けることが必要となります。

咳で吐き気をもよおした際の対処法

激しい咳で吐き気をもよおした際に、和らげる対処法を紹介します。

ゆっくり深呼吸する

激しい咳と合わせて強い緊張やストレスが伴っていると、吐き気が出やすくなります。その際は、呼吸を落ち着かせて緊張をほぐしてみましょう。

少量の水分をとる

口の中が乾燥していると吐き気をもよおす可能性が高くなります。口をゆすぐ、飴を舐める、ガムを噛むなど口の中を潤すことが効果的です。

激しい咳を防ぐ方法

咳の原因となっている病気がわかっている場合は、病気に対する治療を継続することが大切です。同時に、日常生活で咳を抑えるために予防できることもあります。

飴を舐める

飴を舐めることで唾液の分泌が増え、喉の潤いを保つことができ、刺激によって出る咳を和らげることができます。特にミントの香りの飴を舐めることで咳が和らぐ場合があります*。ただし余分な糖分摂取を抑えるために無糖のものがおすすめです。

* 胃食道逆流症がある人では、ミントで胸やけ症状などが悪くなることがあります。

空気の乾燥を防ぐ

空気の乾燥を防ぐことで、咽喉頭の粘膜を保護することが重要です。40~60%が適切な湿度とされていますので、加湿器などを使って喉が乾燥しないようにしましょう。加湿器がない場合は、タオルなどを濡らして室内に干しておくのもおすすめです。ただし、湿度が60%を超えてくるとダニやカビが繁殖する原因になり得ますので注意が必要です。


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。