咳が止まらない原因はマイコプラズマ肺炎かも?主な症状と対処法
2025年12月24日

止まらない咳が続くと、「もしかしてマイコプラズマ肺炎かもしれない」と不安に感じる方もいるかもしれません。
マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌の一種が体内に侵入し、気管支や肺で炎症を起こすことで発症します。発熱や強い咳、全身のだるさなどを伴うことが多く、集団生活を送る機会の多い小児や若い世代に多く見られる肺炎の1つです。
かつては4年周期で流行のピークが見られたことから「オリンピック肺炎」と呼ばれた時代もありました。しかし、近年はそのような周期性はなくなり、年間を通じて注意が必要な感染症と見なされています。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の主な症状や原因、そして咳が止まらないときの対処法などを詳しく解説します。
出典
マイコプラズマ肺炎の特徴と感染の原因
マイコプラズマ肺炎には、他の感染症とは異なるいくつかの特徴が見られます。
ここでは、その特徴と主な感染経路を確かめます。
マイコプラズマ肺炎の特徴
マイコプラズマ肺炎は年間を通じて確認されますが、秋から冬に報告数が増加する傾向があります。潜伏期間が2〜3週間と長く、症状が出る前から感染が広がる可能性がある点が特徴です。
インフルエンザのように流行が急速に広がることはまれですが、濃厚接触が起こりやすい家族や学校といった環境で、ゆっくりと広がるといわれています。
マイコプラズマ肺炎の原因となる「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌は、通常の細菌にある細胞壁を持たないという特徴があります。細胞壁は細菌を外側から守る壁のような構造で、ペニシリン系やセフェム系といった抗生物質は、この壁の合成を妨げて細菌を壊す仕組みで働きます。
しかし、マイコプラズマには細胞壁そのものが存在しないため、これらの薬は効果を発揮しません。その代わりに、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系といった別の種類の抗菌薬が使用されます。ただし、近年はこれらの薬が効きにくい耐性菌も報告されています。
マイコプラズマ肺炎の多くは軽い症状で回復しますが、5~10%未満の割合で中耳炎や胸膜炎、髄膜炎などの重い合併症が報告されているため油断はできません。
現在、有効なワクチンはなく、日常的な感染予防が大切です。なお、感染しても症状が出ない、あるいは軽い気管支炎で済むことも少なくありません。
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マイコプラズマ肺炎に感染する要因
マイコプラズマ肺炎の主な感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」の二つです。
飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみで病原体を含んだしぶきが空気中に飛び散り、それを周囲の人が吸い込むことで起こります。
一方、接触感染は、病原体が付着したドアノブなどに触れた後、その手で目・口・鼻の粘膜に触れることで体内に侵入します。飛沫感染も接触感染も、家庭や学校、職場など、人が集まる場所で発生しやすいといわれています。
マイコプラズマ肺炎の主な症状
マイコプラズマ肺炎は、初期の症状が風邪とよく似ています。
見分けがつかず、ただの風邪だと思い込み、医療機関の受診が遅れてしまうケースも少なくありません。そのため、自己判断せずに専門の医療機関で原因を特定することが、適切なケアにつながります。
頭痛や発熱
発症の初期によく見られる症状として、頭痛や発熱が挙げられます。多くの場合、38~39度程度の熱が数日間続くことがあります。市販の解熱剤を使用しても、熱がなかなか下がらないことがあるのが特徴です。
出典
- マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について HPより
全身の強い倦怠感や疲労感
発熱と同時に、全身に強い倦怠感や疲労感が出ることがあります。
体が細菌と戦っているためと考えられ、人によっては生活に支障が出るほど強いだるさを感じる場合もあります。
喉の痛み
マイコプラズマ肺炎は多くの場合、初期に喉の痛み(咽頭痛)症状が見られます。一方で、鼻水や鼻づまりといった一般的な風邪の症状は軽いか、ほとんど見られません。
ただし、小児がマイコプラズマ肺炎にかかったときは鼻水を伴うこともあります。
吐き気や下痢・嘔吐
マイコプラズマ肺炎は呼吸器の感染症ですが、吐き気や下痢、嘔吐などの消化器症状が表れることもあります。
これらの症状は小児にも見られます。下痢や嘔吐が続くと脱水症状を起こす可能性があるため、こまめに水分を補給することが大切です。
長引く咳
マイコプラズマ肺炎の咳は、発熱や倦怠感、頭痛などの初期症状が出てから数日後に咳が現れるのが特徴です。この咳は痰の少ない「乾いた咳」で、一度始まると3~4週間程度続く傾向があります。
夜間や早朝に激しい発作として起こりやすく、しかも非常にしつこいのが特徴です。熱が下がって他の症状が改善した後も長く続くことがあります。
「長引く頑固な咳」はマイコプラズマ肺炎の特徴ですが、咳の症状だけで病気と断定することは難しいといわれています。
マイコプラズマ肺炎の受診の目安と回復期間
市販の風邪薬を飲んでも症状が改善しない場合や、咳が1週間以上、38度以上の発熱が3日以上続く場合は、医療機関の受診が望ましいでしょう。また、息苦しさや胸の痛み、血が混じった痰(血痰)といった症状が見られる場合は、重症化している可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
マイコプラズマ肺炎の治療では、適切な抗菌薬が処方されます。正しく薬を服用すれば、通常は1週間ほどで症状の改善が見られます。
一方、治療を受けずに自然治癒に任せると、咳が長引く傾向にあります。
注意したいのは、症状が治まった後も、体内から菌が排出され続ける点です。回復後も4~6週間程度は、感染を拡大させてしまう可能性があるといわれています。症状が治まったとしても、しばらくはマスクの着用や手洗いなどを心がけると良いでしょう。
学校や職場への登校・出勤については、インフルエンザのように明確な出席停止期間は定められておらず、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまでとされています。
しかし、激しい咳などの症状が続いている間は、十分に体を休めることが大切です。
出典
- マイコプラズマ肺炎の発生状況について(国立感染症研究所)
マイコプラズマ肺炎で咳が止まらないときの対処法
マイコプラズマ肺炎の咳が長引く要因は、気道の炎症や喉の乾燥などといったものです。咳が止まらないときは、喉を乾燥から守り、炎症を悪化させないセルフケアを試してみると良いでしょう。
喉を温める
冷たい空気は気道を刺激し、咳を誘発する原因の一つです。喉の周りを温めると、吸い込む空気が少し温められて刺激が和らぎ、咳が出にくくなる効果が期待できます。
寒い季節や冷房の効いた室内にいるときは、マフラーやネックウォーマーなどで首元を覆い、喉を冷えから守るのがおすすめです。
水分補給をする
こまめな水分補給で喉を潤すことは、咳を和らげる基本のセルフケアです。常温の水や白湯、カフェインの含まれていないお茶などを少しずつ飲むと良いでしょう。飲み物に、抗菌作用が期待できる生姜などを加えるのもおすすめです。中でもハチミツは、咳を抑える効果が研究で報告されています。
ただし、1歳未満の乳児がハチミツを摂取すると「乳児ボツリヌス症」を発症する危険性があるため、与えないようにしましょう。
また、水分補給としてスポーツドリンクを選ぶ場合は、糖分が多く含まれているため、飲みすぎないよう気をつけましょう。
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部屋を加湿する
咳の症状を和らげるためには、部屋の湿度を適切に保つことも大切です。空気が乾燥しやすい季節や、エアコンの使用中は、室内の湿度を40~60%に保つと良いでしょう。
加湿器を使用したり、濡れたタオルを室内に干したりするなどの工夫で、快適な湿度を保ちましょう。 ただし、湿度が高すぎるとカビが発生し、それが新たな咳の原因となる可能性もあります。加湿のしすぎには注意しましょう。
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その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません
咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。
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病気が隠れているかも
しれません。
放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。
症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。



