長引く咳の原因として気管支喘息や咳喘息(以下、喘息)が最も多いとされています。喘息症状に悩まされている方の中には、「何を食べたら良いのか」「何を避ければ良いのか」と食事に気を遣っている方も多いのではないでしょうか。喘息の症状は、人によって様々で、特定の食べ物によって悪化するケースもあります。今回は、喘息に良い食べ物や、悪化させてしまう可能性のある食べ物について詳しく解説します。個人差がありますが、喘息の症状をコントロールし、快適な日々を送るためのヒントになれば幸いです。

喘息を悪化させる食べ物・飲み物

喘息の症状を悪化させてしまう可能性のある食べ物や飲み物には、どのようなものがあるのでしょうか?ここでは、喘息を悪化させる可能性のある食品の代表的なものをいくつかご紹介します。

喉に刺激を与える食べ物や飲み物

唐辛子などの刺激の強い香辛料

気道を刺激して咳や喘鳴を悪化させる可能性があります。

強炭酸飲料や極端に冷たい飲み物

気道の粘膜を刺激し、喘息発作を引き起こす可能性があります。

アルコール

気管支粘膜をむくませ、喘息の症状を悪化させることがあります。アルコールに含まれる添加物やアセトアルデヒドなどの代謝物による反応で喘息の症状がでることもあります。

気道を収縮させる食べ物

ヒスタミンやアセチルコリンといった成分を含んでいる食材の中には、気道を収縮させてしまい、喘息を悪化させる可能性があるものがあります。代表的なものとして、竹の子、ほうれん草、山芋などが挙げられます。

アレルゲンが含まれる食べ物

特定の食品にアレルギーを持っている場合、その食品を摂取することで、喘息発作が起こる可能性があります。グレープフルーツやメロン、キウイといった果物類だけでなく、ナッツ類や甲殻類なども、アレルギーの原因となることがあります。

喘息の症状を緩和する食べ物・飲み物

喘息の症状を緩和してくれる食べ物や飲み物も存在します。ここでは、喘息の症状改善に役立つ可能性のある食品をいくつかご紹介します。

ビタミンCやビタミンEを含む食べ物

ビタミンCやビタミンEは、抗酸化作用があり、気道の炎症を抑える効果が期待できます。みかん、いちご、ブロッコリーなどを積極的に摂るのがおすすめです。

ハチミツ

冷たい飲み物は喉に刺激を与える可能性がありますので、ハチミツ入りのお湯やハーブティーなど温かい飲み物を習慣的に飲むようにしましょう。特にハチミツに関しては、動物実験で咳を抑える効果があったという報告も発表されています1)。一方で、1歳未満の赤ちゃんでは乳児ボツリヌス症2)を引き起こす恐れがありますので、ハチミツを与えることは避けてください*

1)Tani H et al, J Agric Food Chem. 2023 Sep 20;71(37):13805-13813.
2)乳児ボツリヌス症(厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html)

*ボツリヌス菌は、土壌中などに広く存在している細菌です。ボツリヌス菌が食品などを介して口から体内にはいると、大人の腸内では、ボツリヌス菌が他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、通常、何も起こりません。一方、1歳未満の赤ちゃんの場合、まだ腸内環境が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すため、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。なお、1歳以上の子どもにとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません。

チョコレート

チョコレートに含まれるテオブロミンには、気管支拡張作用があると言われています。ただし、糖分や脂肪分が多いので、摂りすぎには注意しましょう。また喘息の方は胃食道逆流症を伴うことが多いですが、チョコレートは胃食道逆流症を悪化させますので、できるだけ控えてください。

カフェインを含む飲み物

カフェインには、気道を広げる作用があり、一時的に喘息の症状を緩和する効果が期待できます。ただし、カフェインの摂りすぎは、不眠や動悸などの副作用を引き起こす可能性があります。またこれも胃食道逆流症がある場合は悪化させますので、注意が必要です。

喘息を悪化させる行動と悪化させないための行動

食べ物だけでなく、日常生活の習慣も喘息の症状に大きく影響を与えます。ここでは、喘息を悪化させてしまう可能性のある行動と、悪化させないための行動についてご紹介します。

喘息を悪化させる行動

激しい運動

息切れするような激しい運動は、喘息症状を悪化させてしまう恐れがあります。炎症を抑えるため吸入ステロイド薬などを適切に服用し、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことで喘息発作を軽減できる可能性があります。

ストレスを溜める

ストレスや緊張を感じることによって、咳が止まらなくなることがあります。仕事の大事な商談や子どもの学校行事、映画鑑賞、電車や飛行機の中など「咳を出してはいけない」と考えてしまう環境になると、意に反して咳が止まらなくなることがあります。

▼あわせて読む
ストレスで咳が止まらない…長引いて困っている咳の止め方は?

悪化させないための行動

定期的に通院する

喘息患者さんは、医療機関を定期的に受診して吸入ステロイド薬をはじめとする適切な治療を行います。また、呼吸機能検査などでコントロール状態を継続的に確認することも重要です。

内臓脂肪を減らす

肥満は長引く咳や喘息の悪化と関連していますので、バランスの取れた食事や適度な運動を行いましょう。

アレルゲンを減らす

室内環境を清潔に保ち、ダニやカビ、ホコリなどのアレルゲンを減らすことも大切です。

まとめ

喘息の症状は、人によって様々で、特定の食べ物や飲み物によって悪化するケースがあります。この記事では、喘息を悪化させる可能性のある食品や、症状を緩和してくれる食品についてご紹介しました。症状をコントロールするためには、適切な治療を行うことに加えて、生活習慣の見直しも大切です。


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。