カビが原因で咳は出る?家庭でできる予防・対処法
2025年12月24日

日常生活に支障をきたすほどに咳が長引き、その原因が分からなくて不安になった経験はあるでしょうか。
風邪やアレルギーなど咳の要因は多様ですが、室内のカビも原因の一つです。カビは私たちが思う以上に身近な場所に潜んでいます。
この記事では、カビと咳の関係や、カビが原因で起こる可能性のある病気について解説します。家庭で実践できる具体的な予防・対処法も紹介しますので、咳の原因を知りたい、改善方法を探している方はぜひ参考にしてみてください。
カビが原因で咳が出ることはある?
カビが繁殖した住環境では、カビが放出する目に見えない胞子を吸い込むことで咳の原因になることがあります。吸い込まれた胞子が気道や気管支、肺に侵入すると、身体が異物と判断し、体外に排出しようとする防御反応から咳などの症状が表れます。
外出先では症状が治まるのに、自宅で過ごすと咳が出る場合は、室内のカビも疑ったほうが良いでしょう。
なかでも、寝室の布団や枕は汗による湿気が溜まりやすく、カビが発生しやすい場所です。就寝中に咳き込むことが多い方は、一度寝具の状態をチェックしてみましょう。
▼あわせて読む
家に帰ると咳が出るのはなぜ?対策しても治らない時にすべきこと
カビが原因で咳が引き起こされる病気の例
カビの胞子を吸い込むと、一時的に咳が出るだけでなく、いくつかの病気を招く要因になる可能性があります。
ここでは、カビが原因で咳が生じる代表的な病気をご紹介します。
アレルギー疾患
カビの胞子は、アレルギー症状を引き起こす原因物質(アレルゲン)にあたります。胞子を吸い込むと免疫機能が過剰に反応し、気管支のアレルギー反応による咳や喘息症状、またはアレルギー性鼻炎を発症することがあります。
その過程で体内は異物を排除しようとする働きが起こるため、咳のほか、くしゃみ、鼻水といった症状が表れるのです。
こうしたアレルギー症状は、原因となるカビが存在する環境にいる限り、続くことがあります。
出典
- アレルギー性肺疾患(一般社団法人 日本呼吸器学会)
科学的根拠に基づく シックハウス症候群に関する 相談マニュアル(改訂新版)(平成 26 - 27 年度厚生労働科学研究費補助金 健康安全・危機管理対策総合研究事業)
夏型過敏性肺炎
夏型過敏性肺炎は、「トリコスポロン」という種類のカビの胞子が繰り返し肺に入ることで発症する過敏性肺炎(アレルギー性反応による肺の炎症)の一種です。カビは一般に湿度の高い環境で繁殖し、トリコスポロンを含む多くのカビが、梅雨時季から夏場にかけて増殖しやすい傾向があります。
夏場はエアコン内部やキッチン、浴室、洗面所など、湿気がこもりやすい場所は、カビの発生源となりやすいため注意が必要です。高温多湿の季節に稼働させたエアコンからは、内部で増殖した胞子が室内に広がりやすく、それを繰り返し吸い込むことで肺に炎症が起きることがあります。
その結果、咳や息切れ、全身の倦怠感といった症状が表れることもあるため、症状が続くときは早めに医療機関へ相談しましょう。
慢性肺アスペルギルス症
慢性肺アスペルギルス症は、代表的な肺真菌症の一種です。「アスペルギルス」というカビを吸い込むことで発症します。このカビは土壌や植物、空気中のホコリなど屋内外を問わず広く存在しています。
通常、健康な人が吸い込んでも問題になることはほとんどありません。しかし、他の病気の治療などで免疫力が低下している方は注意が必要です。
なかでも、免疫機能が弱まった状態でアスペルギルスが肺に入り込むことで肺の中でカビが定着・増殖し、菌糸の塊(アスペルギローマ)を形成することがあります。この菌糸の塊がしつこい咳や痰といった症状を招く恐れもあります。
夏型過敏性肺炎の原因となるトリコスポロンと同様、アスペルギルスも特殊な菌ではなく、私たちの身近な環境に存在するカビです。トリコスポロンが夏場の室内で繁殖しやすいのに対し、アスペルギルスは一年を通じて自然界に存在し、免疫力が低下したときに病気を引き起こしやすい点が特徴です。
尚、感染ではなく、アスペルギルスに対するアレルギー性炎症を呈する「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」を発症する人もいます。
カビは、多くの場合喘息の直接の原因にはなりませんが、人によってはカビの胞子がアレルゲンとなり、症状を悪化させることがあります。胞子を吸い込むことで気管支の炎症が強まり、呼吸時にヒューヒューという音(喘鳴)が聞こえたり、呼吸困難の発作を引き起こしたりすることもあります。 そのため、喘息のある方は、室内環境を清潔に保ち、カビの発生を防ぐよう留意しましょう。
▼あわせて読む
もしかして喘息?症状の特徴と原因とは?
出典
家庭でできる咳予防法や対処法は?
カビが原因と考えられる咳の症状を改善するには、原因となるカビを除去し、再発を防ぐ室内環境を整えることが大切です。
根本から対策するために、家庭で実践できる具体的な予防法や対処法について解説します。
湿度管理をする
カビの増殖を抑制するうえで、室内環境の湿度管理は非常に重要なポイントです。
カビは湿度が60%を超えると活発に増殖が進みやすい傾向があります。カビの繁殖を防ぐには、室内の湿度を常に40%から60%程度の快適な状態に保つことをおすすめします。
梅雨の時期や窓の結露で水分が増えやすい季節には、除湿機やエアコンのドライモードを活用し、湿度を適切にコントロールすると効果的です。
▼あわせて読む
喉の乾燥と咳の関係は?日ごろからできる咳予防の方法
換気をする
換気は、カビ対策の基本です。
換気には、大きく2つの役割があります。1つは空気中に漂う胞子を屋外に排出すること、もう1つは室内にこもった湿気を逃がすことです。対角線上の空気の通り道ができるように窓を開ける、あるいは換気扇を回して空気を入れ替えるなど、日常的に風通しを良くする工夫を取り入れましょう。
クローゼットや押し入れ、家具の裏側などは空気がこもりやすく、カビが発生しやすい場所です。こうした場所にも定期的に風を通すよう心がけましょう。
こまめに掃除する
ホコリや汚れはカビの栄養源となり、繁殖のリスクを高めます。こまめな清掃を心がけ、清潔な状態を維持することがカビの発生予防につながります。
なかでも、エアコンや加湿器のフィルターは、カビが増殖しやすい箇所ですから、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。エアコン内部は、一般家庭で掃除するのは大変です。掃除が難しいため、プロの専門業者に依頼するのも一つの方法でしょう。
カビの除去をする
もし室内の天井や壁にカビが発生してしまった場合は、放置せず早急に取り除く必要があります。そのままにしておくと胞子が大量に空気中へ飛散し、再び繁殖する原因になります。自身で除去できる範囲であれば、速やかに市販のカビ取り剤などを使って除去しましょう。
ただし、カビの範囲が広い場合や、自身での除去が難しいと感じる場合は、無理をせず専門のカビ除去業者に相談してもいいでしょう。
▼あわせて読む
咳を止めたい時はどうすれば良い?咳を抑える・予防する方法
その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません
咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。
あわせて読む
長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。
放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。
症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。



