慢性咳嗽の原因を特定するために
行われる検査とは1)

長引くせきの原因となっている病気を診断するために、血液検査、喀痰(かくたん)検査、画像検査、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度検査、必要に応じて内視鏡検査などが行われます。検査によって得られた数値や所見によって確定診断や治療前診断を行い、考えられる病気に応じて基本治療を開始します(表1)。

慢性咳嗽の原因を特定するために行われる検査とは

表1 慢性咳嗽の原因を特定するために行われる検査

検査項目:血液検査
検査でわかること
白血球数
感染症などの炎症により増加
原因が推測される主な病気
呼吸器感染症
百日せき、肺炎、肺非結核性抗酸菌症、肺結核など
検査でわかること
CRP
C反応性蛋白:感染症などの炎症により増加
原因が推測される主な病気
呼吸器感染症
百日せき、肺炎、肺非結核性抗酸菌症、肺結核など
検査でわかること
末梢血好酸球数
好酸球による気道炎症で増加
原因が推測される主な病気
ぜん息
検査でわかること
総IgE値
特異的IgE抗体の総量:ハウスダストやダニなどのアレルゲンの有無を判定
原因が推測される主な病気
ぜん息
検査項目:喀痰検査
検査でわかること
細菌の塗抹・培養
たんのなかの細菌を特定し、感染症に対する薬剤を決定
原因が推測される主な病気
呼吸器感染症
検査でわかること
細胞診
細胞にがんによる変化がないか観察
原因が推測される主な病気
肺がん
検査でわかること
好酸球、好中球比率
好酸球はアレルギー疾患で増加、好中球は感染症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)で増加
原因が推測される主な病気
ぜん息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
検査項目:画像診断
胸部X線写真
検査でわかること
胸部の異常な陰影
原因が推測される主な病気
呼吸器感染症、間質性肺疾患、肺がん、心不全、胸水など
副鼻腔X線写真
検査でわかること
副鼻腔の異常な陰影
原因が推測される主な病気
慢性副鼻腔炎
胸部CT写真
検査でわかること
胸部X線写真ではわかりにくい胸部の病変
原因が推測される主な病気
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、肺がん、気管支拡張症
検査項目:生理学的検査
呼吸機能検査
検査でわかること
努力性肺活量
息を思いきり吸ったときの肺活量:間質性肺疾患で低下
原因が推測される主な病気
間質性肺疾患
呼吸機能検査
検査でわかること
1秒率
努力性肺活量に対して1秒間で吐ける空気の割合:慢性閉塞性肺疾患(COPD)やぜん息で低下
原因が推測される主な病気
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ぜん息
気道過敏性検査
検査でわかること
気道の過敏性
気道の刺激に対する敏感さを測定:ぜん息で上昇
原因が推測される主な病気
ぜん息
検査項目:FeNO濃度検査
検査でわかること
呼気の一酸化窒素濃度
炎症によって生じる一酸化窒素(NO)の測定:ぜん息で上昇
原因が推測される主な病気
ぜん息
検査項目:内視鏡検査
検査でわかること
食道粘膜びらん
粘膜がはがれ落ち、内部が露出した状態、ただれ
原因が推測される主な病気
胃食道逆流症(GERD)
引用文献
1) 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019. 東京:メディカルレビュー社;2019.