長引く咳で声がかすれ、思うように声が出ない。そのようなつらい状態でお悩みではありませんか。喉の痛みや違和感で、仕事や日常での意思の疎通に支障をきたすこともあります。そして、咳と声枯れは同時に発症することが多く、2つは密接に関係しています。

この記事では、咳と声枯れの関係性から、2つの症状に共通する主な原因、そして症状を和らげるための対処法までを順を追って解説します。声の異常で悩んでいる方は、ぜひご覧ください。

咳と声枯れの関係性

激しい咳が続くと、声枯れが生じることがあります。私たちの声は、喉の奥にある声帯という器官が振動して出てきます。

咳をするとき、瞬間的に声帯は強く閉じ、肺からの空気圧で強制的に開かれます。この動作が何度も繰り返されると、繊細な声帯の粘膜に大きな負担がかかります。その結果、声帯が炎症や腫れを起こし、声枯れという状態に至るのです。

急性咽頭炎や扁桃炎などで痰が多く絡む場合は、注意が必要です。気道に絡んだ痰を体外に出そうとするため、咳の回数が増えやすくなります。それに加え、痰自体が声帯に付着して正常な振動を妨げることも、声枯れを引き起こす一因と考えられています。

咳と声枯れが起こる主な原因

咳や声枯れは、喉の酷使や生活習慣、アレルギー反応など、様々な原因で発症します。ここでは、咳と声枯れが起こる主な原因を解説します。

大声の出しすぎ

スポーツ観戦やコンサートなどでの声援、カラオケなどで無理に声を張り上げると、声帯に大きな負荷がかかり炎症を起こすことがあります。この炎症が、声枯れや、喉の違和感を伴う咳の原因となると考えられています。

こうした声の酷使で起きる症状は一時的なものがほとんどで、喉を安静にすれば自然に回復する場合が多いでしょう。

しかし、日常的に声を酷使する方は、声帯への負担が長期間続くため、より深刻な症状につながるおそれがあります。負担が続くと、声帯ポリープや硬いしこり(声帯結節)ができてしまうことも少なくありません。

これらのポリープや結節は、声帯のどの部分にできるかによって症状が異なります。場所によっては、声が出ない、あるいは出しづらいといった状態に陥ることもありますし、ひどい声枯れを招くこともあります。

喫煙や飲酒などの生活習慣

喫煙や飲酒も、咳や声枯れの要因になり得ます。タバコの煙に含まれる有害物質は、喉の粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こす場合があります。長期の喫煙は慢性的な喉頭炎のリスクを高めるだけでなく、将来的に咽頭がんや喉頭がんにつながることがあるのです。

また、アルコールには利尿作用があり、体内の水分が失われやすくなります。これにより喉が乾燥し、声枯れが起こりやすくなるのです。飲酒量や飲み方によっては胃酸の逆流を招き、声枯れを悪化させる原因にもなります。

薬の副作用

服用中の薬の副作用で咳や声枯れになることがあります。例えば、高血圧治療薬の中には、「ACE阻害薬」のように副作用として空咳が出やすい種類のものがあります。

また、花粉症の治療でよく用いられる抗ヒスタミン薬や、一部の利尿薬なども、口や喉の乾燥を招くことが知られている薬です。喉が乾燥すると声帯の滑らかな動きが妨げられ、声がかすれる悪影響があるのです。

さらに、複数の薬を併用することで、空咳や喉の乾燥といった副作用が、互いに影響し合ってより強く表れる可能性も考えられます。

アレルギー

花粉やハウスダストなどへのアレルギー反応も、咳や声枯れに関係します。アレルギー反応で鼻や喉の粘膜に炎症が起こると、喉へ刺激が加わり咳が出やすくなります。声枯れはアレルギーの主症状というわけではありません。

しかし、アレルギーによる咳が長く続いて声帯に負担がかかったり、鼻や喉の炎症がのど全体や声帯まで広がったりすることで、間接的に声が枯れてしまうことがあります。

また、咳や声枯れだけでなく、鼻水やくしゃみ、皮膚のかゆみといった他の症状が同時に表れるのも、アレルギー反応の特徴です。

▼あわせて読む
花粉症で咳が止まらない…辛い咳の原因と止めるための対処法

咳や声枯れを和らげる対処法

咳や声枯れの症状がつらいときは、喉への負担を減らし、回復を促すためのセルフケアが大切です。ここでは、日常生活で取り入れられる対処法を紹介します。

喉を休める

咳や喉に違和感があるときは、何よりも声帯を休ませることが大切です。

会話を最低限にし、大声を出すのは避けましょう。「ささやき声」も、かえって声帯に負担をかけることがあることに気をつけましょう。喉を安静に保つことで、声帯の炎症や腫れが引きやすくなり、回復が早まることが期待できます。

部屋を加湿する

空気が乾燥すると、喉や気道の粘膜から潤いが失われ、咳や声枯れといった症状が悪化しやすくなります。

気道の粘膜にある「線毛」は、異物を体外に排出する重要な役割を担っていますが、乾燥するとその働きが鈍るのです。加湿器を使うか、洗濯物の室内干しなどで部屋の湿度を40~60%に保ち、喉に優しい環境を整えましょう。

ただし、加湿器の向きや加湿のしすぎ、加湿器内のカビの発生には十分注意しましょう。

▼あわせて読む
喉の乾燥と咳の関係は?日ごろからできる咳予防の方法

こまめなうがいと水分補給をする

喉の乾燥を防ぐためには、こまめな水分補給が効果的です。冷たい飲み物は喉の血管を収縮させ、刺激となる場合があります。常温の水や白湯、温かい飲み物で喉を潤すのがいいでしょう。

ただし、カフェインを多く含む飲み物は、利尿作用でかえって体の水分が失われやすくなるため、水や白湯を基本にすることをおすすめします。

また、うがいも喉のケアには有効です。喉についたホコリなどの異物を洗い流し、粘膜に一時的な潤いを与えることができます。

刺激物の摂取制限をする

香辛料が多く入った辛い食べ物や、極端に冷たい、もしくは熱い飲み物は、弱っている喉の粘膜を直接刺激します。その刺激によって炎症が悪化し、痛みが増したり咳を誘発したりするおそれがあることに気をつけましょう。

症状があるときは、喉に優しい食事を心がけることが回復への近道です。

のど飴やトローチなどを使用する

のど飴やトローチは、唾液の分泌を促して喉に潤いを与え、咳や喉のイガイガ感を和らげます。

炎症を抑える成分や殺菌成分を含む製品もありますから、ご自身の症状に合ったものを薬局などで相談し、上手に活用しましょう。

▼あわせて読む
咳を止めたい時はどうすれば良い?咳を抑える・予防する方法


その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません

咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。

長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。

放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。

症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。