咳エチケットとは?正しい方法やNG例・配慮するポイントについて
2026年03月16日

電車の中やオフィスなどの公共の場で、急に咳き込んでしまい、周囲の視線が気になった経験がある人も多いのではないでしょうか。
特に新型コロナウイルス感染症が拡大してからは、「咳=周囲を警戒させるもの」という意識が強まり、ほんの少しの咳払いでも申し訳なさを感じる人もいるかもしれません。
咳は、体内に侵入した異物や痰を外へ排出しようとする防御反応です。
しかし、その咳に含まれるしぶきにはウイルスや細菌などが潜んでいる可能性があり、無意識のうちに周囲へ感染を広げてしまっているかもしれません。
そこで重要なのが「咳エチケット」です。
咳エチケットは、単なるマナーの枠を超え、自分自身と周りの人々の健康を守るための具体的な行動指針とされています。
この記事では、正しい咳エチケットの方法やついやってしまいがちなNG例などを解説します。
咳エチケットとは何なのか
咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際に、しぶきを周囲に飛び散らせないようにし、感染症の拡大を防ぐための取り組みのことです。
私たちの身近にある風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、そして子どもや若者に多く見られるマイコプラズマ肺炎などは、いずれも咳やくしゃみを介して広がる「飛沫感染」のおそれがあります。
こうした病気は、感染している人がする咳やくしゃみによってウイルスや細菌が飛散し、近くにいる人の感染リスクを高めてしまいます。
咳エチケットは、周囲の方への思いやりとして大切な心がけです。
相手に不快感を与えないようにするほか、周囲の人の健康を守ることが目的ではあります。
一方で、咳が続いているご本人の負担ケアも大切です。
人前で咳が続くことに気後れしたり、肩身の狭い思いをされることもあるかもしれません。
ご自身の気持ちにも目を向けながら、無理のない範囲で体調への対応を考えていきましょう。
必要に応じて専門医に相談することもひとつの選択肢です。
正しい咳エチケットの方法は?
しぶきが飛ぶことを防ぎ、感染が拡大しないようにするには、正しい咳エチケットの方法を身につけることが大切です。
ここでは、多くの人に実践してほしい咳エチケットのやりかたを紹介します。
マスクを正しく着用する
咳や鼻水の症状があるとき、まず心がけたほうが良いのはマスクの着用です。
マスクは自分のしぶきが外に出るのを物理的に遮断するほか、吸い込む空気の湿度を保ち、乾燥から喉を守る役割も果たします。
マスクの正しい着用のポイントは、鼻からあごまでを隙間なく完全に覆うことです。鼻が出ていたり、あごにかかっていたりする状態では、隙間からしぶきが漏れてしまうため、十分な効果が期待できません。
また、ゴム紐を耳にしっかりとかけ、顔のラインにフィットさせるように調整しましょう。マスクには不織布製、布製、ウレタン製など様々な種類があり、形状もプリーツ型や立体型など多岐にわたります。
製品によっては表裏や上下が決まっているものもあるため、製品に書かれている使い方をよく確認してから着用することが大切です。
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ティッシュやハンカチで口・鼻を覆う
咳エチケットを心がけたいと言っても、常にマスクを持ち歩いている状況とは限りません。急に咳やくしゃみが出るようになったけれど、マスクを持っていないといった状況も十分考えられます。
マスクがないときに咳が出そうなときは、清潔なティッシュやハンカチを使って、口と鼻をしっかりと覆いましょう。
ティッシュで口元を覆えば、マスクと同じ役割を果たしてしぶきが空気中に拡散するのを防ぐことができます。
なお、使用した後のティッシュには病原体が付着している可能性があるため、そのまま放置せず、すぐに蓋付きのゴミ箱などへ捨てます。ハンカチを使用した場合は使い回しを避け、早めに洗濯するようにしましょう。
上着や袖で口・鼻を覆う
とっさの出来事で、マスクもティッシュも手元にないという状況では上着の袖や腕の内側を使って口と鼻を覆うのが適切な対応です。
手のひらで直接覆ってしまうと、後述するように接触感染の原因となりやすいため、避けるべきとされています。
長袖の服を着用しているなら、肘を曲げるようにして腕の内側に顔を近づけ、周囲にしぶきが飛ばないように配慮しましょう。
咳エチケットの良くない例
良かれと思って行っている動作が、実は感染を広げる原因になってしまうこともあります。
ここでは、咳エチケットとして避けるべきNG例を確認しておきましょう。
咳やくしゃみをするときに手で覆う
咳やくしゃみが出るとき、反射的に手のひらで口を押さえてしまう方は多いかもしれません。しかし、これは咳エチケットの観点では好ましくない方法です。
手にしぶきが付着したまま、ドアノブや電車のつり革、共用のスイッチなどに触れると、そこにウイルスや細菌が付着してしまいます。
付着した菌を別の人が触り、その手で自分の目や口、鼻の粘膜に触れることで病原体が体内に侵入し、感染してしまうのです。
接触感染は家庭や学校、職場など人が集まる場所で発生しやすく、気づかないうちに多くの人へウイルスを移してしまう可能性があります。
もしくしゃみや咳をする際に手を使ったときは、手洗いや手指の消毒を行いましょう。
石鹸を使った丁寧な手洗いが基本ですが、外出先などですぐに手が洗えない場合には、アルコール消毒液などを使います。
日頃から清潔な状態を保つことは、自分自身の健康を守るだけでなく、周囲への二次感染を防ぐことにつながります。
うっかり咳やくしゃみのしぶきが手に付着してしまったり、鼻をかんだりした後は速やかに消毒をして感染拡大の防止に努めましょう。
咳やくしゃみをするときに何もしない
もし口元を覆わずにそのまま咳やくしゃみをしてしまうとしぶきは広範囲に飛び散り、近くにいる人が菌やウイルスを直接吸い込んでしまうリスクが高まります。
また、周囲に人がいなかったとしても、飛んだしぶきがテーブルや手すりなどに付着し、それを介して間接的に感染が広がってしまうかもしれません。
周囲への配慮を欠いた行動は不快感を与えるだけでなく、感染症が広まる一因となります。
出典
咳エチケットを考えるうえで大切なこと
やむを得ない事情で、多くの人が実践できる咳エチケットができない人もいます。
大切なのは咳エチケットが実行できない人の存在と、そういった人たちの気持ちを理解することです。
マスクの着用が困難な人もいる
「咳が出ているのにマスクをしていない」という人を見かけたとき、すぐにマナー違反だと決めつけると誤解を招いてしまうこともあります。
世の中には、身体障害や精神障害、あるいは特定の感覚過敏などの特性により、どうしてもマスクを着用し続けることが困難な人たちもいます。
感覚過敏を持つ人の中には、マスクの繊維が肌に触れる感覚を耐え難い痛みのように感じたり、マスク内にこもる空気で呼吸が苦しくなったりするケースがあります。
こうした目に見えにくい事情を抱えている場合があることを理解し、寛容な姿勢を持つことも、咳エチケットの一環と言えるでしょう。
咳が出るが飛沫感染しない病気もある
咳が出ているからといって、その人が必ずしも感染症にかかっているとは限りません。中には他人に移る心配のない、病気が原因で咳が出ているケースもあります。
代表的な例として、気道の慢性的な炎症によって起こる「気管支喘息(きかんしぜんそく)」や、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)を伴わずに咳だけが続く「咳喘息(せきぜんそく)」などが挙げられます。
また、胃酸が食道へ逆流することで咳が誘発される「胃食道逆流症(GERD)」なども、しつこい咳の原因となることが知られています。
こうした病気は咳によって感染源が広まることはありません。そのため、マスクをせずに過ごしている人もいます。
「咳をしている=感染源」と断定するのではなく、他人に移る心配のない咳に悩んでいる人がいる視点を持つことが、お互いに過ごしやすい環境づくりに役立ちます。
- もし、あなた自身が喘息や咳喘息に悩まされているのならば、周囲の人へのマナーとして咳エチケットを守ることも大事です。常日頃から意識する必要はありませんが、特に冠婚葬祭などのフォーマルな場に行くときは、咳エチケットの気遣いも重要と言えます。
また、喘息バッジと呼ばれるアイテムを活用する人も増えています。喘息バッジは、自分の咳が感染症によるものではないことを周囲にそれとなく伝えるためのツールとして、新型コロナウイルス感染症の流行期から広く知られるようになりました。喘息バッジを身につければ、咳エチケットを心がけられますし、周囲から誤解される心配も少なくなるでしょう。
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咳エチケットに関連するよくある質問「よくある質問」
最後に、咳エチケットを心がけるにあたって、よくある質問をまとめました。
咳をするときはどうやって口や鼻を覆うべきですか?
基本的には、清潔なハンカチやティッシュを使用するのが望ましいです。
もし手元に何もない場合には、衣服の袖や腕の内側を使って、しぶきが外に漏れないようにしっかりと覆いましょう。
なぜ手で口や鼻を押さえないほうが良いのですか?
手に付着したウイルスや細菌は、手で触れるドアノブ、スイッチ、つり革などを介して、他の誰かへ感染を広げる原因になるためです。
感染リスクを最小限に抑えるためには、ウイルスや細菌が手に付かない方法を選びましょう。
マスク着用時でも咳エチケットは必要ですか?
マスクを正しく着用していれば、しぶきの大部分は防ぐことができます。
しかし、激しい咳が出る際には、顔を少し横に向けるなどの配慮をプラスすることで、より周囲への安心感を与えることにつながります。
その咳、慢性咳嗽(まんせいがいそう)かもしれません
咳が8週間以上長引いている状態を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼び、決して年単位で続いているものだけが「慢性」ではありません。その原因は個人によって異なり、原因が特定できれば治療・対処できるかもしれません。詳しくは、「慢性咳嗽とは?」をご覧いただき、咳で困っている場合は最寄りの病院やクリニックに相談ください。
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長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。
放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。
症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。



