8週間以上続く長引く咳を「慢性咳嗽」といいます。原因となる主な病気には、咳ぜん息、ぜん息、アトピー咳嗽、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあります。

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咳が長引くと、「なぜ治らないのだろう」と不安に感じる方も多いでしょう。また、治療を受けているのに思うように改善しないと感じる方もいらっしゃるかと思います。自己判断で治療を中断したり、我慢を重ねてしまうと、症状が改善しないだけでなく、見逃してはいけない病気が隠れている場合もあります。

症状の改善に向かうためには、医療機関を受診し、検査結果に基づいて適切な治療を受けることが重要です。現在診療を受けている方は、医師に相談のうえ、再検査や他の医療機関への受診も検討してください。

このページでは、受診から治療に至るまでの流れや、具体的にどのような診察・検査・治療が行われるのかを分かりやすくご案内します。

診療の流れ

慢性咳嗽で医療機関を受診した場合は、問診の他に画像検査や呼吸機能検査、血液検査などを行うことがあります。その検査結果・診断に応じた治療を行っていきます。

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慢性咳嗽の診療の流れの図

問診・診察

長引く咳の原因を特定するには、まず詳細な問診が重要です。問診を行うことで疑わしい病気を絞り込み、診断を確かにしたり、稀な病気を除外したりするために適切な検査へと進みます。

■問診時に伝えておくべきこと
・咳が長引いて困ったこと
・咳が出やすいタイミング
・咳以外の症状
・咳が引き起こされるきっかけ
・咳によって生活に影響が出ていること
など

ご自身の症状や悩みを整理し、正確に伝えることが、適切な診断や治療につながります。当サイトでは、「受診サポートシート」をご用意しておりますので是非ご活用ください。

検査

長引く咳の原因を調べるために以下のような検査を行います。検査内容は画一的ではなく、患者さんの症状に合わせて必要なものを選び行います。

呼吸機能検査

息を吸ったり吐いたりして、肺の働きや空気の通りやすさを調べます。

■検査の目的と対象病気
呼吸機能の低下や気道の狭さを調べる目的で、ぜん息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・間質性肺炎などが対象です。

画像検査

胸部X線写真や胸部CT検査で、肺や気道の状態を確認します。

■検査の目的と対象病気
肺や気道に異常がないかを調べ、肺炎や見逃してはいけない病気(肺がん、間質性肺炎)などの診断に役立てます。

血液検査

採血を行い白血球数、CRP、末梢血好酸球数、総IgE値などを調べます。

■検査の目的と対象病気
炎症や感染、アレルギー反応の有無などを調べて、咳の原因を探ります。感染症(百日咳、肺炎、肺非結核性抗酸菌症、肺結核など)、ぜん息などの診断に役立てます。

その他の検査

上記の検査結果から追加で以下の検査を行うことがあります。

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検査項目 検査の目的と対象疾患
副鼻腔X線 副鼻腔炎の有無を確認する
呼気一酸化窒素 気管支の炎症を図る
喀痰検査 肺炎などの感染症やアレルギーの有無を確認する
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治療

診断に応じて、治療の方針が決まります。
咳の原因となっている病気がわかった場合、すぐにわからなかった場合、十分な治療を行っても咳が残る場合で対応が異なります。

慢性咳嗽の原因となっている病気がわかった場合

検査の結果をもとに、咳の原因と考えられる病気に応じた治療を進めます。長引く咳は様々な病気が原因になるため、ここでは代表的な病気をご紹介します。

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病気 主な症状 主な治療法
ぜん息 ・呼吸すると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」鳴る
・夜間~早朝にかけて咳が悪化する(咳で目が覚める)
・季節の変わり目に症状がでやすい
・症状が落ち着いたり悪化したりを繰り返す
・ステロイド薬(吸入)
・気管支拡張薬(吸入)
・去痰薬
・生物学的製剤(注射)
慢性閉塞性肺疾患(COPD) ・運動したときに息切れする
・たんの量が多い
・喫煙歴がある
・禁煙
・気管支拡張薬(吸入)
・去痰薬
・抗菌薬
・生物学的製剤(注射)
・運動・栄養療法、呼吸リハビリテーション
慢性気管支炎 ・慢性的な咳(痰を伴う、朝方に多い)
・痰増加、息切れ、胸の不快感
・喘鳴や体力低下
・禁煙
・去痰薬
・抗菌薬
・気管支拡張薬(吸入)
気管支拡張症 ・慢性的な咳・大量の痰(黄色~緑色)
・朝方に強い咳
・喘鳴、血痰、喀血
・息切れ、胸痛、肺炎リスク
・去痰薬
・抗菌薬
・排痰・呼吸リハビリテーション
・生活習慣改善(禁煙、感染予防)
アレルギー性鼻炎 ・くしゃみ、鼻水、鼻づまり
・目やのどのかゆみ
・抗アレルギー薬(内服・点鼻)
・ステロイド薬(点鼻)
・生活環境整備(アレルゲン除去)
慢性副鼻腔炎 ・鼻づまり、粘り気の鼻水(黄色~緑色)
・後鼻漏、臭いがわかりにくい
・頭重感、顔面痛
・抗菌薬
・去痰薬
・ステロイド薬(内服、点鼻)
・生物学的製剤(注射)
胃食道逆流症 ・食道症状:胸やけ、呑酸、おくび
・食道外症状:喉頭炎、咳、喘息、歯の酸蝕症
・消化性潰瘍治療薬
肺結核など呼吸器感染症 ・痰、発熱(2週間以上)
・血痰、胸痛、呼吸困難
・倦怠感、体重減少、寝汗
・抗菌薬
肺がんなどの悪性疾患 ・血痰、息切れ、呼吸困難、胸痛
・体重減少、疲労感、発熱、声のかすれ
・手術療法
・化学療法
・放射線療法
・免疫療法・分子標的療法
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引用文献
  • 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025 . 東京:メディカルレビュー社;2025.より作成

慢性咳嗽の原因となっている病気がすぐにわからない場合

問診・検査の結果、咳以外に異常が見られずすぐに慢性咳嗽の原因がわからない場合には、以下の病気を疑って吸入薬や飲み薬などが処方されることもあります。

代表的な病気 たんの量が多い場合 副鼻腔気管支症候群(SBS) たんを伴わない、もしくはたんが少量、一過性の場合 咳ぜん息 アトピー咳嗽/喉頭アレルギー 胃食道逆流症(GERD) 感染後咳嗽 など

十分な治療を行っても咳が残る場合

原因と考えられる病気の治療を十分に行っても咳が改善しない場合は、咳過敏症を原因とする「難治性の慢性咳嗽」の可能性を疑い、追加の治療や生活習慣の見直しを行います。

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主な治療 主な作用や見直しの内容
P2X3受容体拮抗薬 咳にかかわる神経の過敏状態を抑えます。
生活習慣や環境の見直し 水分補給や鼻呼吸、腹式呼吸を習慣付けます。
食事やカフェイン・アルコール摂取量を管理します。
咳を我慢する習慣を身に付けます。
咳の誘因を自覚し可能な範囲で避けます。
ストレスを管理します。 など
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引用文献
  • 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025 . 東京:メディカルレビュー社;2025.より作成

長引く咳の体験談

慢性咳嗽で悩まれる方の体験談をお伺いしました。咳が出るようになったきっかけや困りごと、どのような治療を行っているのかをご紹介しております。

長引く咳には、
病気が隠れているかも
しれません。

放っておくと重症化する可能性がありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
専門医が原因を特定し、あなたに合った治療法を提案します。いますぐ最適な医療機関を検索しましょう。

症状を上手く伝えられず、治療につながっていない方もいるかもしれません。そんな方は受診サポートシート(保存可能)もご活用ください。